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倶楽部報(2015年秋号)

竹内秀夫君を偲ぶ

高多 倫正

2015年09月09日

私たちは忘れない

竹内秀夫君を一言で評するならば「善人」という以外に思い当たる言葉がない。

彼のような人物に早逝されると、自らを省みるにつけ世の中の不条理を思わざるを得ない。なぜなら彼は、責任感だとか正義感、親愛とか誠実といった世間から次第に希薄になっていこうとしている大切なものを、きわめて自然に内なる精神から発し続けた人だったから。

昨年の8月1日から4日にかけて、秋のリーグ戦でのベンチ入りを断念したばかりの無念を秘めつつ、彼は猛暑の中を日吉まで日を置かずに通って、チームの方針、現況、194人の部員のプロフィール、部の財務状況に至るまで、時に熱波のグラウンドにも立ちながら懇切丁寧な引き継ぎを行ってくれた。その後も体調の優れぬ中、鵡川キャンプの見送り、現地への激励にまで来てくれた。それはリーグ戦での采配に懸けていた彼の並々ならぬ意気込みの発露だったと思う。

2014年秋のリーグ戦は、竹内監督不在のなか優勝を懸けた早慶戦に敗れて4位に終わった。翌日リーグ戦の結果を入院先の昭和大病院の病室へ報告に上がると、驚いたことに彼は次期主将をはじめとする新役員の構想を練り上げて待っていた。ここでも彼は野球部の先を見つめて責任を果たそうとしていた。

私たちは忘れない、一度も采配を振るうことなくこの世を去った名将がいたことを。そして病魔と闘いながらも最期まで生への意欲と野球への情熱を誠実に燃やし続けた我らが竹内秀夫君に捧げる「安らかに」。

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