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倶楽部報(第70回全日本大学野球選手権記念大会優勝臨時号)

34年ぶり4度目の日本一、全日本大学野球選手権で優勝

蔭山  実(昭和61年卒 四條畷高)

2021年06月15日

最後の打者を追い込み、時速143キロの速球にバットが空を切った。マウンドで両手を高く掲げる橋本達弥(3年、長田)のもとにナインが駆け寄る。ベンチとブルペンからも全選手が飛び出し、喜びを分かち合った。6月13日に神宮球場で行われた第70回全日本大学野球選手権記念大会の決勝。慶大は15安打の猛攻と盤石の継投で福井工大を13-2で破り、昭和62年以来、34年ぶり4度目の日本一に輝いた。試合後の閉会式で、福井章吾主将(4年、大阪桐蔭)に優勝旗が渡されると、スタンドに残った多くのファンから大きな拍手がわいた。最高殊勲選手賞(MVP)には正木智也(4年、慶応)が選ばれ、最優秀投手賞は2勝、防御率2.77の増居翔太(3年、彦根東)、首位打者賞は16打数9安打、打率5割6分3厘の渡部遼人(4年、桐光学園)にそれぞれ決まり、表彰が行われた。

日本一となったメンバー写真
日本一となったメンバー

頂点まであと1勝と迫った決勝。慶大は初回、二死から敵失で出た下山悠介(3年、慶応)を一塁に置いて正木がバックスクリーンの右に2点本塁打を放ち、先制する。「逆方向の本塁打は大学に入ったときからずっと意識してやってきたので、それがあの場面で出てよかった。感触は完璧でした」と正木。中盤の4〜6回は、正木の適時打など9安打に犠飛も絡めて着実に追加点を挙げ、リードを広げる。9回には、二死から満塁とし、渡部遼の適時打、下山の3点本塁打で5点を挙げた。投げては、春季リーグ戦最多の4勝を挙げた先発の増居が中盤に2点を返されたものの、6回まで被安打3と好投。7回から生井惇己(3年、慶応)が今大会で初登板となったが、無難に相手打線を無安打に抑え、9回は橋本達が3者連続三振で締めくくった。

優勝を決め、マウンドに駆け寄り、喜ぶナイン写真
優勝を決め、マウンドに駆け寄り、喜ぶナイン

堀井哲也監督は試合後のインタビューで、34年ぶりの日本一に、「本当によくやってくれたという一言に尽きます」と選手たちを称えた。正木の本塁打には、「相手は非常にきっちりとした野球をやってくるので、なんとか先制点がほしいと思っていた。本当に大きかった」と語り、勝利の要因に、「次の1点」「次の塁」「次のアウト」に選手がよく集中してプレーできたことを挙げた。コロナ禍で2年ぶりとなった全日本大学野球選手権が無事終わったことには、全国の大学野球の春季リーグ戦に立ち戻り、「関係者、指導者、選手が一生懸命やってきた結果だと思う」と感謝を述べた。

一方、福井主将は「日本一」というチームの目標を達成した喜びを語るとともに、「一戦必勝をテーマに掲げてリーグ戦のときからやってきたので、いつも通りに自分たちの野球をやろうと、きょうの試合に挑みました。スタンドにいる選手も含めて部員一同で勝ち取った優勝だと思う。監督とチームメートに恵まれた結果なので、本当にみんなに感謝したい」と語った。

慶大の優勝を表示するスコアボード写真
慶大の優勝を表示するスコアボード

慶大は今大会の全試合で先制点を奪い、投手力を中心とした守りで相手に流れを渡すことなく試合を進めた。初戦となった二回戦の和歌山大戦は、リーグ戦で好調だった朝日晴人(3年、彦根東)の適時二塁打で1点を先制。中盤に同点とされたが、終盤、先発に復帰した新美貫太(4年、慶応)の適時二塁打で1点を勝ち越し、さらにスクイズなどでリードを広げ、4-2で逃げ切った。準々決勝の関西学院大戦では、初回に正木の犠飛と福井の適時打で2点を先制。その後、追いつかれたが、押し出しの死球で勝ち越し、福井と新美の犠飛で追加点を挙げ、5-3で勝利した。

準決勝の上武大戦は正木の2点本塁打で先制。中盤に不運な展開から満塁本塁打で逆転を許し、今大会で初めて追いかける立場になったが、廣瀬隆太(2年、慶応)の二塁打を足がかりに犠飛ですぐに1点を返すと、終盤に敵失と連打で同点に追いつき、さらに福井の適時打で再びリードを奪った。その後、同点とされたが、攻撃の手を緩めることなく、8回に正木の適時打、広瀬の適時三塁打で4点を挙げ、10-6で粘る相手を突き放した。

守りの中心はリーグ戦と同様、森田晃介(4年、慶応)と増居の両先発陣と抑えの橋本達。森田は二回戦と準決勝に先発し、持ち前の粘りの投球で相手に流れを渡さず、いずれも責任回数を投げ切った。特に準決勝では逆転満塁本塁打を許した後もしっかりと締めて反撃に弾みをつけた。増居は準々決勝で相手の本塁打攻勢にあったが、安打は許しても散発に抑え、試合を作った。中継ぎ陣では、渡部淳一(3年、慶応)が二回戦で8回から登板し、失点を1点にとどめる好投で、橋本達の救援をあおぐことなく試合を締めくくった。

打線では、首位打者となった渡部遼が準々決勝と準決勝でともに3安打と猛打を奮い、毎打席のようにチャンスをつくって打線を牽引した。下山は二回戦こそ無安打だったものの、3番に上がった準々決勝と準決勝はそれぞれ2安打で渡部遼に続き、後続の正木、福井に繋ないで得点に結びつけた。リーグ戦で1番打者として活躍した廣瀬は準決勝からの登場となったが、2試合で長打2本を含む豪快な4安打で相手を圧倒した。橋本典之(4年、出雲)は4試合で2安打にとどまったが、走者を三塁に置いて犠飛で打点を着実に挙げるなど、攻守に役割を果たした。

一方、大会では指名打者が採用され、左の指名打者として途中から先発で出場し、決勝で5番に上がって3安打1打点と奮った北村謙介(3年、東筑)、準々決勝で貴重な追加点を挙げる適時打を放った古川智也(3年、広島新庄)、準決勝で反撃のチャンスをつくった石川涼(4年、興南)と、代打陣の活躍も打線に厚みを加えた。リーグ戦以上に「投手を中心とした守り」と「繋ぐ打線」というチームの特徴を発揮してつかんだ日本一だった。

最高殊勲選手賞、正木智也写真
最高殊勲選手賞、正木智也

最優秀投手賞、増居翔太写真
最優秀投手賞、増居翔太

首位打者賞、渡部遼人写真
首位打者賞、渡部遼人

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